

Story
― 物語―
01
信州上田の小さな酒蔵
長野県上田市に所在する岡崎酒造は創業350年の歴史ある酒蔵。
蔵を継いだ「杜氏」岡崎美都里と、婿入りした「社長」岡崎謙一が時にぶつかり合い、時に支えあいながら日本酒を醸してきた。
しかし、近年は売り上げの低迷により今後の方向性を見い出せないでいた ―

02
存続が危ぶまれる棚田
一方、上田市で唯一の棚田『稲倉の棚田』は農林水産省の「日本の棚田百選」にも選ばれる風光明媚な田園。
しかし近年は生産者の高齢化や、維持の担い手不足などその存続が危ぶまれていた―

03
「想い」をつなぐ
そこで「岡崎酒造」と「稲倉の棚田」がタッグを組み、Made in 上田の酒を醸すことになった。
しかし、だだ「モノ」を造るだけでは世間には伝わらない。“味”や“蔵の歴史”だけでなく、その背景にある生産者や地域の魅力を伝えることが使命と考える地酒屋や居酒屋、ソムリエが関わることによって日本酒が単なる「モノ」から「コト」へ変わり、飲み手に伝わる。
日本酒に関わるそれぞれの「想い」をつなぐ物語がいま始まる―!

Cast
― 登場人物 ―
おかざき けんいち
おかざき みどり
岡崎 美都里
三姉妹の末っ子。先代杜氏の引退にともない、2002年に岡崎酒造初の蔵元杜氏となる。
子育てをしながら孤軍奮闘で酒造りを続けてきたが、2011年から謙一が加わり、夫婦の酒造りが本格的に始まる。3年目は造りの方向性を巡って意見が割れ、夫婦関係が危機的状況に発展した。
「稲倉の棚田」との出会いによってメイド・イン上田の酒造りを意識し始める。
妻の美都里とは大学時代のサークルで知り合う。岡崎酒造に婿入りしたが、当初は蔵に入らず上田から勤め先の東京都庁へ出勤したり、老人ホームの施設長を務めるなど、酒造りとは距離を置いていた。2011年より蔵に入り本格的に酒造りに関わる。3年目の危機は自ら「暗黒時代」とよんでいる。
岡崎酒造の生きる道を“地域”に見出す。
岡崎 謙一
岡崎酒造 社長
岡崎酒造 杜氏



稲倉の棚田保全委員会
石井 史郎 久保田 良和
いしい しろう
くぼた よしかず
「稲倉(いなぐら)の棚田」を維持・管理する地域住民からなる組織。各地区の当番制で田植えや草刈り、稲刈りを行っている。
高齢化や後継者不足によりその存続が危ぶまれているが、「棚田オーナー制」を採用し、一般の人々に農作業に参加してもらったり「棚田キャンプ」を開催したり、盛り立てようと奮闘中。岡崎酒造とは酒米“ひとごごち”の生産でタッグを組み、地域の活性化に期待する。

地酒屋 宮島
宮島 国彦
みやじま くにひこ
上田市真田に所在する酒販店の4代目店主。
“信州の地酒しか扱わない”こだわりを持ち、その博識ぶりや人となりから市街地から離れているにもかかわらず客足が絶えない。
岡崎酒造とは古くからの付き合いであり、酒造りのよきアドバイザーでもある。
モットーは「モノを売りながらコトを売る。」その真意とは―。


旬酒場 日がさ雨がさ
宮澤 一央
みやざわ かずお
東京四谷で信州の地酒をメインに扱う居酒屋の店主。岡崎酒造が夫婦で酒造りをはじめたときからアドバイスを送る。
酒蔵に限らず、様々な生産者のもとに足を運び、造り手の“想い”に耳を傾け、客に還元する。「ただ味を表現するだけじゃなく、関わっている人も表現する」
信州の地酒を広めるべく今日も客前に立つ。

わだえみのわいん塾
わだ えみ
「わだえみのわいん塾」主催。JSAシニアソムリエ。
日本ソムリエ協会が立ち上げた日本酒に特化した認定制度「酒ディプロマ」を取得するため、共通の知人を介して岡崎酒造で酒造りを勉強する。ソムリエ的視点から日本酒業界の問題点を突く。
謙一社長とマリアージュ(酒と食の相性)の話になると毎回白熱する。

内閣府政策参与
(クールジャパン戦略担当【当時】)
浜野 京
はまの みやこ
上田で開催された「日本酒と関連分野の海外展開を目的とした試飲・試食会」において司会進行を務める。
一番手に酒の説明をした岡崎酒造に容赦なく突っ込み、その後に続く酒蔵を恐怖に陥れた。
ただ、その歯に衣着せぬ物言いは酒蔵の将来を思ってのこと。もはや「蔵の歴史」や「味」だけでは世間に酒は広まらないと岡崎酒造に説く。
